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妊娠中の目薬、本当に大丈夫?大規模データが解き明かす

   

妊娠中の目薬、本当に大丈夫?大規模データが解き明かす5つの真実

妊娠中、つらい花粉症やアレルギーで目のかゆみが止まらなかったり、もともと治療している緑内障の管理が必要だったり…。そんな時、眼科で処方された目薬の添付文書を見て、手が止まってしまった経験はありませんか?「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」この一文を前に、「治療は続けたいけれど、お腹の赤ちゃんに影響があったらどうしよう…」と、治療の必要性と赤ちゃんへの不安との間で、多くの妊婦さんがジレンマを抱えています。この記事では、漠然とした不安を乗り越え、リスクを正しく理解し、管理するための最新の科学的データに基づいた「5つの真実」をお届けします。


1. 「危険かも」は本当?大規模調査で示された意外な結論
これまで、多くの目薬の添付文書に書かれていた注意書きは、実は「はっきりとした危険性が証明されている」からではなく、「妊婦を対象とした十分なデータがない」ための、予防的な記述でした。倫理的な観点から、妊婦を対象とした医薬品の臨床試験は難しく、安全性を確かめるデータが長らく不足していたのです。しかし近年、この状況を大きく変える画期的な研究結果が日本から報告されました。日本の大規模診療報酬データベースである**JMDC Claims Database(2005年〜2018年)**を用いた後ろ向きコホート研究において、妊娠初期に眼科局所ステロイド薬、緑内障治療薬、眼科局所抗菌薬を使用しても、新生児の先天奇形、早産、低出生体重児のリスクが有意に上昇することはなかった、という結論が示されたのです。
これは、医師でさえ処方に慎重にならざるを得なかった状況を変える可能性を秘めた、非常に重要な知見です。
これまで眼科局所治療薬の安全性に関する明確なエビデンスは示されておらず、...処方する眼科医も判断に迷うことが多かった。今回のリアルワールドデータを用いた解析によって、妊婦へ眼科局所治療薬を処方するハードルが下がったと言えるでしょう。
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2. なぜリスクが低いのか?目薬が「飲み薬」とは違う仕組み
そもそも、なぜ目薬は飲み薬に比べて胎児への影響リスクが低いのでしょうか。その理由は、薬の成分が体内に吸収される仕組みの違いにあります。
飲み薬は消化管で吸収された後、肝臓で代謝されてから全身の血流に乗ります。一方、目薬の成分が全身に吸収される際の主なルートは、目から鼻へとつながる「鼻涙管」を通り、鼻の粘膜から吸収されるというものです。
この経路は肝臓での初回通過効果(肝臓で薬の成分が分解・不活性化される仕組み)を受けませんが、そもそも点眼薬1滴に含まれる薬物の量はごくわずかです。そのため、最終的に全身の血流に入る薬の量は飲み薬と比較してはるかに少なく、胎児に到達する量も極めて限定的になるのです。大規模研究で安全性が示された背景には、こうした薬理学的な理由があります。
この鼻の粘膜からの吸収こそが、全身への影響の主な原因です。そして、この経路は「涙点圧迫法」という簡単な方法で物理的に遮断することができます。
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3. リスクをさらに下げる「涙点圧迫法」という簡単な一手間
大規模調査で安全性が示されたとはいえ、「リスクはゼロに近い方がいい」と考えるのは当然です。そこで、誰でも今日から実践できる、非常に効果的で簡単な自己管理テクニックをご紹介します。それが**「涙点圧迫法(Punctal Occlusion)」**です。
やり方はとても簡単。目薬をさした後、1〜5分間、目を閉じて目頭にある涙嚢部(るいのうぶ)を指で軽く押さえ、その後、目を開けるだけです。
これにより、薬液が鼻涙管へ流れ込むのを物理的に防ぐことができます。薬の全身への吸収ルートを遮断するため、すでに低い全身への吸収量をさらに劇的に減らすことが可能です。この簡単な一手間が、あなたと赤ちゃんを守るための強力なセーフティネットになります。
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4. 「どれでも同じ」ではない。知っておきたい緑内障治療薬の注意点
全体としてリスクは管理可能であると示された一方で、「どの目薬でも全く同じ」というわけではありません。特に緑内障の治療薬のように、長期にわたって使用する薬の中には、種類によって慎重な選択が求められるものもあります。薬理作用に基づいたリスク階層を理解することが重要です。
第一選択(最も安全性が高い選択肢):プロスタグランジン関連薬、局所炭酸脱水酵素阻害薬 これらの薬剤

は全身への影響が極めて限定的と考えられており、妊娠中の緑内障治療における第一選択肢と見なされています。
注意して使用(特に妊娠後期):β遮断薬 心拍数や気管支に作用するβ遮断薬(チモロールなど)は、微量でも全身に吸収されると、胎盤を通過して胎児徐脈(脈が遅くなる)、呼吸抑制、低血圧などを引き起こす可能性があります。そのため、特に妊娠後期に使用する際は、より慎重な判断と産科医との連携が求められます。
必要な場合にのみ使用(リスクが比較的高いため慎重な判断を要する):α2作動薬 α2作動薬(ブリモニジンなど)は、母体の血圧を低下させる作用があり、新生児に中枢神経系の抑制を引き起こすリスクも知られています。他の薬剤が使用できない場合に限定して検討されるべき選択肢です。
このように、「安全」という言葉を鵜呑みにせず、必ず専門家である医師や薬剤師に相談し、自分と赤ちゃんにとって最適な薬を選択することが重要です。
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5. 胎児には安全でも「赤ちゃん」には禁忌の薬があるという事実
最後に、非常に重要でありながら見落とされがちな事実をお伝えします。それは、「妊娠中に安全に使えること」と「生まれた赤ちゃんに安全に使えること」は、全く別の問題だということです。
その代表例が、先ほども触れた緑内障治療薬の一つ、ブリモニジン酒石酸塩(製品名:アイファガンなど)です。この薬は、大規模調査では妊娠中の使用と新生児の異常との間に関連は見られませんでした。しかし、生まれた後の赤ちゃん、特に2歳未満の乳幼児への使用は「禁忌」、つまり絶対にしてはいけないことになっています。
なぜなら、乳幼児に使用すると、無呼吸、昏睡、筋緊張低下のほか、徐脈(脈が極端に遅くなる)、低血圧、低体温といった、命に関わる重篤な副作用を引き起こす危険性が報告されているからです。
この違いが生まれるのは、新生児の体が未熟であるためです。薬を分解する肝臓の機能や、脳を守る「血液脳関門」というバリアが未発達なため、胎内にいる時は問題にならなかったごく微量の薬でも、生まれた後の赤ちゃんには深刻な影響を及ぼすことがあるのです。妊娠中に問題なく使っていた薬でも、自己判断で授乳中も使い続けたり、赤ちゃんの目に使ったりすることは絶対に避けてください。
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まとめ:新しい知識を、安心できるマタニティライフのために
最新の研究は、妊娠中の目薬使用に関する私たちの過度な不安を、科学的根拠をもって和らげてくれました。多くの一般的な目薬のリスクは、正しく理解し、適切に対処することで十分に管理可能であることが示されています。
その安全性を確実なものにするためには、
全身への吸収を最小限に抑える**「涙点圧迫法」**を実践すること。
薬の種類によって特有のリスクがあることを理解し、専門家と最適な薬を選択すること。
「妊娠中」と「産後・授乳中」では薬の安全性が異なる場合があることを知っておくこと。
これらの知識が依然として重要であることに変わりはありません。この記事で得た情報を元に、不安な点は必ずかかりつけの医師に相談し、納得のいく治療を選択してください。

当院では、妊娠中に使える点眼と注意すべき点眼のパンフレットを用意しています。WEBサイトには、医療法の規定で、個別の商品名を載せることができませんが、パンフレットには載せていますし、処方時に妊娠中の方には説明をします。



葵眼科:https://aoiganka.com/

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